May J. 15th ANNIVERSARY 〜Long Interview〜

 
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──4曲の制作を終えて何か変化はありました?

めちゃ変わりました。これまでとは違う責任感が出たというか。自分の意志や判断でここまでコントロールして曲作りをしたのは初めてなので、これがどう届くかってことも含めてすべては自分の責任。楽しみ半分、不安も半分ですけど、いまはもっと作りたいって気持ちが強いです。

──ミルさんとの相性も良かったんですね。

すごくいいです。彼は理論的に考える人でバランスを取るのがうまい。私が欲しているものを全部分析して計算できるから、詳しく説明しなくてすごいものを作ってくれるんですよ。だから私も、これまでは「こういうものは求められていないかも」とストップをかけていたMay J.を出すことができた。それはさっきも言ったように15周年ということも大きくて14年間、自分が表現したいこと、そのときのベストだと思うことをやってきたけど、ここで一回、あえてやらなかったことをやってもいいんじゃないかと。それが『DarkPop』のDarkな部分なんだけど、そこをしっかり出して表現することが必要だと思ったし、ミルくんとも意気投合してやりましょうってなってプロジェクトが動き出したんですよ。しかも、そういう話をしたあとすぐ最初の緊急事態宣言が出たっていうタイミングもいま思うとよかった。当時はライヴや舞台が次々と中止になって辛かったけど、あそこで外の世界をシャットダウンしていなかったら『DarkPop』はできていない。4曲ともそれぞれ完成するまで2ヶ月ぐらいかかっているんですが、それぐらい時間をかけたからじっくり自問自答できたし、そのおかげで深いところから言葉が出てきたんですよ。だから歌詞に関しては100%本音。これまでもMay J.として伝えたいメッセージを正直に書いてきましたけど、今回はどっちかというと“はしもっちゃん”の言葉かなと思っています(笑)。

──YouTube「May J.のはしもっちゃんねる」でおなじみのはしもっちゃんですね(笑)。ご自身の中でYouTubeの影響も大きい?

私にとっては必要な場でした。デビューしてからずっとMay J.と本名の橋本芽生が裏表でくっついている感覚だったけど、これまでは表に出ているMay J.を橋本芽生が裏で支えるっていう感じだったんです。その裏表が初めて同じ土俵に並び、私はこういう人ですって表現できたのがYouTube。でも、スタート時はMay J.とはしもっちゃんってすごくギャップがあるから、それを出すのが不安でした。私の中ではどっちも嘘のない自分だけど、May J.は自分だけのものじゃないって意識があって。May J.を崩しちゃいけない、人間くさい部分は出さないほうがいいって思っていたからはしもっちゃんを出す自分に自分が慣れていなかった。最近はようやく慣れてきましたけどね。ま、“はしもっちゃん”はめっちゃテンションが高いときの私を映像化しようっていうのがテーマなので、いつもあんなにはしゃいでいるわけじゃないんだけど(笑)、15年経ってやっとMay J.と橋本芽生がひとつになった気がする。今後はその違いすらわからなくなってくれたらいいなって思います。

──今後はリクエストライヴや全国ツアーも予定していますが、いまのMay J.が伝えたいこと、いまのMay J.にしか表現できないことは?

先ほど話に出た「メロディ」もそうだけど、いまいちばん肩の力を抜いて歌えていると思っていて。『DarkPop』

の影響もあってこのメッセージは強く伝えよう、ここは抑えておこうって意識して歌えるようになってきたんですね。その変化は大きくて、これまでは求められているものに対して全力で応えなきゃいけないって気持ちがあったけど、いまは自分のペースで自分の思う音を伝えてもいいんじゃないかなと。そこは押し引きの美学というか、私もそういう歌声のアーティストの曲がいいなって最近は思うようになったから、それを自分の声で表現することを探り探りやっていこうと思っています。ただ、こういう言い方すると無責任かもしれないけど、じゃあ何年後にはこうなりたいとか、具体的なことはわからない(笑)。私は先のことを決めるのが苦手で5年後、10年後に好きなものや考えがどう変わっているか、自分でも予想がつかないし、決めたくないんですよね。

──だからこそ15年間、止まらずに歌い続けてこられたのかも。『DarkPop』もそうだけど、枠を決めないから、そのとき自分が欲する音楽や時代に合わせて変化していけるし、新しい表現を生み出せる。それがMay J.らしさになっている気がします。

確かに私は持続と変化の人なのかもしれない。変化を恐れないので持続もできるんですよね。逆にひとつのスタイルを貫く人も素晴らしいと思うし、それができたらまた違うことができたかもしれないですけど、どっちがいいかなんて正解はないですからね。ただ、歌だけは負けたくないし、そのためには絶対妥協しないって想いはずっと変わらない。その芯があるから歌以外のことはいくらでもトライできたし、変化してもブレずにやってこられたんだと思います。だからこれからも歌に関しては満足したくない。「足りない」って指摘されたら、そのたびに「悔しい、どうにかしよう」って気持ちを持ち続ける自分でいたいです。