May J. 15th ANNIVERSARY 〜Long Interview〜
──新プロジェクト「DarkPop」はアーティストの原点に立ち返り、いまのMay J.さんがいちばん表現したいことを形にしたもの。プロデューサーに新進気鋭のバンド・yahyelの篠田ミルさんを迎え新境地といえる仕上がりになっていますが。本当にガラリと変わってめちゃくちゃ新鮮でした。
ミルくんに関しては有名な評論家の方が「すごい人たちがいる」ってyahyelを評価していて、私も結構聴いていたんです。だから、自分がミルくんと一緒にやるってなったときは驚きました。でも話をしたら、彼は自分の知識を使ってJ-POPの人を面白く料理したいという考えを持っていて。私自身もハードコアなところを知っている人と一緒に仕事がしてみたかったから方向性がすごくマッチしたんですよ。ただ、最初はそれこそ自分の信念とちょっと反する気がして…。
──なぜですか?
みんなに求められていることを最優先するのが信念でありやりたいことだったので、ここまで自分の好きなことだけをやってしまっていいのかなと…。ファンの中にはこれまでのMay J.路線を崩して欲しくないという人もいますからね。でも、そこにあえてトライしたのは15周年という節目とコロナで活動が止まったこと、そしてミルくんとの出会いが大きい。最初のミーティングのとき「やりたいことをやったときのファンの反応が不安」って伝えたら、ミルくんが「いまやらなかったらいつやるんですか?」って言ってくれたんです。確かにいまはSpotifyとかサブスクで音楽を聴く人が増えて、好みが多様化している。だったらこれまでのファンはもちろん、それ以外のコアな音楽を聴く人たちにMay J.を聴いてもらうことも十分可能なんじゃないかなと。それは崩すのではなく引き出しを増やすってことだから、信念に反することにはならないんじゃないかって思ったんです。あと何より私自身がJ-POPで歌い上げる曲だけじゃなく、違うジャンルも歌えるってことをここで証明したかったんですよね。
──配信シングルでリリースされる4曲を聴けば、それは十分伝わってきます。英語詞ががっつり入った歌詞を始め、これまでのMay J.とは明らかにジャンルの違う曲調になっていますね。
英語詞も含め今回はこれまでNGにしていたことを一旦フラットにして、ちょっと踏み込んだダークなものにしたかったんです。曲自体がシリアスだったらToo muchになってしまうけど、ミルくんのトラックは音がすごくミニマムだから、それをやってもカッコよく聴こえるというか。むしろタブーなことを言うぐらいがちょうどいいじゃないかなって。だから思い切って英語詞を増やして、大事なところだけ日本語で付け加えるぐらいの割合で書きました。
──4曲の中でもより踏み込んだ歌詞になったのは?
アナ雪の時期の現象を書いた『Can`t Breath』でしょうね。これまではこの話題を避けていたし喋るのも嫌だったんです。「まだそれを言ってるの?」って言われるから。でも、いまもSNSの問題はあとをたたないし、こういうことはしっかり自分の言葉で言うべきだなと。何気ないひと言でも心ない言葉はこういう風に人を傷つけ、一生残る傷になるかもしれないって事実を伝えたくて、これまで言ってこなかった想いを歌詞にしました。
──4曲全部に言えることですけど、歌声に初めて“エグみ”を出していますよね。それが程よいエッジとエモ感を出していて、ミルさんのミニマムなサウンドも相まってより歌が入ってきました。
ザラついた感じの歌声ですよね。そこは人間味が出るよう意識した。いつものおおらかなMay J.にならないよう、それこそ私がグチを言うときの声の感じを出すようにしたんです。こういう歌い方は『No No No』のときにあったニュアンスだけど、それ以外は初めて。でも自分でもすごく気に入っています。いつもはMay J.として完璧に歌おうとしているので、あとから聴くとどうしてもダメ出しをしたくなっちゃうんだけど今回はもう少し肩の力が抜けているというか。いい意味で声が主張していないし、素の自分に近いから安心して聴ける。だからめっちゃリピートして聴いています(笑)。