May J. 15th ANNIVERSARY 〜Long Interview〜
──アナ雪以降の転機は?
そのあとの転機はまだ来てなくて、ずっと探している段階(笑)。2014年の終わりに紅白があり翌年に初の武道館公演をやって、いろんな目標を達成したけど、それ以降の6年間は「これでガラリと変わりました」っていう出来事がないんですよね。
──東京フィルハーモニー交響楽団・ビルボードクラシックスとの共演による単独公演やブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」の出演、音楽以外ではバッサリ髪を切ったりとか、スペシャルなことはいっぱいありましたけど(笑)。いろんな方面で認められ始めた時期でしたよね。
髪を切ったのは単純に好みが変わって長い髪の女性に憧れがなくなったから(笑)。髪型が変わればファッションが変わるし見え方も変わるから、それはそれで楽しくて。でもだんだん飽きてきて、またロングに落ち着いたって感じです。仕事に関してはもちろん「この仕事ができてよかった!」って瞬間はいっぱいあって。その都度モチベーションも上がりましたけど、オーケストラライヴやミュージカルはいまの自分への評価を知る機会というか。この方々に呼んでもらえるってことはこの方々と一緒にいてもおかしくない自分になれたのかなって感覚で転機とはちょっと違うんですよね。激動とか試練を伴うようなことじゃないと転機って気がしないのかもしれない(笑)。あと、やっぱりオリジナル曲でヒットしたいというひとつのゴールがあるので、そこに到達しない限り認められていないという気持ちがある。『Let It Go』もディズニーの力であって自分の力ではないですからね。そう考えると自分の中では『Garden』から『Let It Go』、『Let It Go』から次って節目になっていて。ジャンルで分けるとデビューしてからのR&B期が一章、次のJ-POPやカバーの時期が2章。で、いまは3章に入っているっていう感覚です。
──年齢的にも、だいたい1章が10代、2章が20代、3章が30代に当てはまりますね。
確かに年齢的な変化も大きい。10代から30代って人としても女性としても変化の大きい時期だと思うけど、私も単純に好きなものが変わりました。映画とかも10代の頃はおバカなわかりやすいものをよく観ていて、深いものを欲していなかった(笑)。でも20代半ばぐらいから変わってきたし、変わろうとしてきた。憧れの女性像も若いときはファッションや外見に惹かれていたけど、いまはマインドや生き方に惹かれるようになったんですよ。それに伴って自分自身も世の中の役に立てるような存在に少しでもなりたいと思うようになってきて。いまはまだ自分のことで精一杯ですけど、人にも地球にも役立てる人になりたいなと。
──逆に、15年経っても変わらないことはあります?
喋るのはずっと下手かな(笑)。自分なりに上手に話そうとしているけど、なかなか上達しない。ライヴもMCをなくして歌だけにできたらいいのになって思うけど、そうはいかないので…。
──ファンは生のトークも聞きたいですから。
私もファンの方と話したくないわけじゃないし、むしろやりとりとかしたいんですよ。ただ、ライヴに来る人は「メイちゃんの言うことはなんでも聞きたい」って思ってくれる人もいれば「May J.の歌だけ聴きたい」って人もいるから、メイちゃんとMay J.をどれくらいの割合で出すかさじ加減が難しい。しかも私の場合、口が達者ではないので毎回悩むんですよ。
──でも、ファンはおそらく「口が達者なMay J.」を求めてないですよね?
そうそう、きっとそうなんです。でも、そこに甘えちゃいけないと思うのでやっぱり悩んじゃう(笑)。
──そんな風に真面目なところも変わらない(笑)。33歳のMay J.から10代、20代のMay J.に声を掛けるなら、なんて言ってあげたいですか?
「おいおい、カッコつけんてんじゃないゾ」って(笑)。いま思うと昔はこう言う風に見られたいって自分像があって。そこからちょっとでもズレないようにめっちゃ頑張っていたんです。10代はB系のクールな感じに見せたかったし、20代前半はその反動でビジュアル的にはギャルっぽくしたりして極端(笑)。当時の流行りに自分を乗せようとしていたし、曲を聴いてもらうためには自分の音楽と自分のイメージを一致させなきゃいけないと思っていたんですよね。だから当時はカッコつけているつもりも作っている意識もなくて、その時代ごとに好きな自分、見せたい像を模索して「これがベスト」だと思うことをやっていた感じ。どの時期の自分も本当の自分だから、「カッコつけんてんじゃねーよ」なんて言ったら
「カッコなんてつけてねーよ!」って当時の私は言い返してくると思う(笑)。ただ、例えば20歳の自分を30歳の自分が見ると、誰でもちょっと恥ずかしいじゃないですか。そんな感覚で「カッコつけなくていいよ」って思うと同時に「一生懸命だったよね」って可愛く思える。15年分の写真のアルバムを1枚1枚見返すような気持ちになります。
──そうやって模索しながらも15年間、歌い続けてこられた原動力はなんでしょう?
辛いこともあるけど、やっぱり楽しいから。同時に自分がやりたいことを実現できていない悔しさがあって常にできていない、まだ頑張れるって思っているからでしょうね。自分に満足していないからずっとやり続けているし、やめたいと思ったこともない。それに一回やめちゃうと、そこから新しいことを始めないといけないし、戻りたくなったときもいろいろ大変じゃないですか。なので根性でやめないとこもあって「できなくてもできるようにするんだよ」って自分を奮い立たせている。そこはすっごく負けん気が強いのかもしれない(笑)。
──May J.さんは我を張る人ではないけれど、これだけは譲れないっていう芯の強さをずっと持っていて。10代の頃は年齢より大人っぽく感じましたけど、33歳になってようやく実年齢と精神年齢が同じになってきたのかもしれしれないですね。
確かに、それはあるかも。自分でも違和感がなくなって楽になった気がします。そして15年やってきていちばん思うのは理解されない時期があっても、ちゃんと見ている人は見てくれているってこと。それがあるからどんな状況になっても自分が信じたことを続けていけばいいんだなって思えた。そのときは結果が出なくても時代は変わるし、変わればいつか理解されるときがくるかもしれないですから、何があろうと自分の信念は曲げちゃいけない。それが15年間、歌い続けてきた私の信念です。